アパートや賃貸マンションなどの賃貸経営では建物の維持管理が経営状況に大きな影響を与えます。
新築時にはきれいな建物もその後の維持管理が不十分だと入居者の評判は落ち、空室増加の原因となったり、賃料水準が低下したりするなど、賃貸事業の収益性が悪化します。
アパート経営や賃貸マンション経営では、こうした日常の維持補修や管理運営などはお金がかかるため敬遠されがちです。
しかし、何の修繕もせずに放っておくと毎日、雨・風にさらされている屋根や外壁はどんどんボロボロになっていきます。
見た目の悪い建物は入居者から敬遠されるようになりますので入居者を確保するためには家賃を下げるしか方法がなくなります。
一度家賃を下げてしまうと家賃を上げることは困難です。
雨漏りなどの不具合がでて建物を修理したから家賃を上げるというわけにはいかないのです。
日常の建物維持管理では、ちょっとした雨漏りの補修や、故障した部品の交換などを行いますが、建物が築10年~15年くらい経ってくると外壁の塗装や屋根の張り替え、設備の交換など、大規模修繕工事を行う必要があります。(建物の構造によって必要な工事や施工時期は異なります。)
だいたいの修繕時期は以下の通りです。
防水工事(屋根・屋上・ルーフバルコニー) 10年~15年に一度
外壁工事(タイル・吹付け・塗装) 7年~10年に一度
外壁シーリング工事(外壁・金物等) 10年に一度
内部工事(エントランス・廊下等共用部のみ) 15年に一度
内装工事 退去時原状回復にて適宜(設備が競合物件に劣る場合は新しいものに交換が望ましい)
設備更新(空調機・給湯器などの交換) 設備の寿命による
最近は入居希望者がアパートや賃貸マンションの部屋を選ぶとき、インターネットで検索をして、その検索条件にあった物件の中から、気に入った物件を選ぶ探し方が一般的になりました。
設備が劣る物件は検索にかからず見学対象にならなくなってしまいます。
空室対策の面からも設備の更新が必須となっています。
家賃を下げれば入居者が確保できるので修繕は不要と考える人もいるようですが、資産価値を維持するということを考えると修繕は必要と言わざるを得ません。
所有している物件を売却する必要がある場合、物件の価格は賃料を利回りで割り戻して算出します。
利回り9%で物件が売れる地域だとしたら年間の賃料が500万円の物件は約5,550万円で売れますが、修繕をせずに家賃が450万円に下がってしまった物件は5,000万円でしか売却できないことになります。
売却の可能性を考えた時に、この場合の年間賃料50万円の差は550万円の売却価格の差になります。
昨年の宅建業法の改正で不動産取引の媒介契約締結時、重要事項説明時、売買契約時に、ホームインスペクションや建物のコンディションに関する説明が義務化されました。
今回の改正ではインスペクションの実施を義務化したわけではありませんが、インスペクションの普及につながる可能性はあります。
調査をすれば修繕をしていない建物は劣化が進んでいますから物件の価格に劣化が反映されます。
売却時のことを考えても資産価値を落とさないためには適切な建物の維持修繕が必要なのです。
投稿者プロフィール
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不動産業務歴20年のファイナンシャルプランナー(AFP)
宅地建物取引士・不動産コンサルティングマスター・賃貸不動産経営管理士・住宅ローンアドバイザー・2級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
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